俺とアイマスの思い出を綴っていく

学校に行かなかった理由は高校に馴染めなかったのと遅れてやってきた思春期のせいだった

しかし親にはサボってると言えず俺は朝家を出て一日中外を散策して家に帰っていた
毎日今日は何をして時間を潰そうかと悶え苦しんでいた

金もないやることもない友人もいない
学校に行っても行かなくても毎日が辛かった

金は無くてもゲームをやってる人間を観ているだけで面白かった
シューティングゲームやら格ゲーやらの上手い人のプレイをずっと見ていた
たまに自分もやってみたがセンスがないと悟った

飽きれば少し遠くのゲーセンに行っていつもと違う風景を楽しんだ

そして半月ほどで俺はある出会いをした

みたこともない筐体にチェック柄のデブがヘッドホンを付けて頭でリズムを取りながらタッチしていた

第一印象は「なんだこれ…」だった

なんか女の子がジャージで歌ってる
音ゲーか？と思ったがそれにしては可笑しい

俺は近くの台にあった説明書を見た
なんかアイドルを育てるらしい
落ちこぼれを一流に育て上げる…プロデューサーの手によって

非常に興味深かった

…なんだこれ生ぬるいな
こんなので一流になれるわけないだろ

そう思った

案の定オーディションには落ちていた
さっきまで陽気にリズムを取っていたデブは世の中に絶望したような顔で両替に向かっていた

目があった
デブは俺を見ても動じなかった
悲しみの向こう側に確かな熱意を感じた

先ほどまで嘲笑うように見ていた俺は衝撃を感じた
これはただのゲームじゃない
そう思った

次の日
俺が同じゲーセンにいくとアイマスの筐体に昨日のデブ、結構イケメンなスーツ姿の若者がいた

デブは今日もいる
その事実が俺をワクワクさせた
やはりこいつはプロデューサーという奴なのだなと

なんでこいつスーツやねん
仕事しろや
と思ったが自分を省みるとなんとも言えなかった

そして俺はその日の目的を果たすべく
1000円を握りしめ筐体に座った
そして驚いた

1プレイ200円
3プレイ500円

最初のプレイに500円

昨日の説明書で値段を見ていなかった俺は焦った

しかし座った手前プレイしないわけにはいかなかった

とりあえずデブを見た
やっぱ下手だなこいつ

そしてスーツの若者を見る

衣装めっちゃ豪華やん
なんかノートにメモしとるがな
ヘッドホン店に置いてあるのと違うタイプやがな
500円玉の束が置いてあるがな

格が違った

俺は決意した

俺はこのスーツの男みたいになりたい
デブのようにみっともない男にはなりたくない

そして俺はアイマスヴァージンを卒業した

俺は結構無難な男だった

頑張り屋さんのいい子っぽいな～

好印象だった

チュートリアル的なレッスンを終えてオーディション、そして番組出演
俺は胸に抱いていた微かな思いが確信に変わるのがわかった

あれ？この子歌下手じゃね？

きっとレッスンを続ければ上手くなる
そういう仕組みかよ
よくできたゲームだな
そう思ってた時期が私にもありました

これめっちゃおもろいやん

今月のお小遣いを使い果たした

俺はアルバイトを決意した

全てはアイマスのため

なぜここまで必死になってるか分からなかった
ただ、いつでも春香は俺を待っていた
俺との、トップアイドルになるという約束を信じて待ってくれていたのだ

初任給は3万ほどだったと記憶している
全てアイマスにつぎ込んだ

なんか呆気ねえな…

バイトが辛かった

タバコを買いにきた客にキレられた時
俺はもう辞めてやる…と裏で泣いた
財布を覗いても札は入っていない

目に入ったのはステージで輝く春香の姿だった

もう少し、頑張ろう
客にキレられた？
オーディションに落ちるのとどっちが辛い？

バイトの時間が増えた

惜しくは無かった

バイトの時間が増えたせいで一日に春香に会える時間は減ったが
遅くなっても必ず春香に会いにいった

毎日が楽しかった
学校にいる時さえも楽しかった
バイトも楽しかった

アイドルランクが足らず引退させることになってしまった

熱狂しない
会話もなんだか淋しかった

ただ、世界で1番輝いてる気がした

そんな生活が続いた

余談だが当時の俺はインターネットなど使えずアーケード以外の情報はほとんど知らなかった
CDやxboxのことも知らなかったし
アニメのことなんてしらなかった

しらなかった

半年もすればデブもスーツも挨拶を交わすようになり
一年もすればデブとは友人になった

ちゃんと学校行こう

頑張ってるアイドルに負い目を感じて学校も行く、バイトもする、プロデュースもする

バイトの時間も減って
プロデュースの時間も減った

大変だったけど
高校生にして敏腕プロデューサー
そんな設定で乗り切った

学校にコンピュータあるじゃん
これでアイマスについて調べよ

この時2009年7月ごろ
俺とアイマスが出会って一年ほど経っていた
この時初めて知ったことが3つある

PSPでアイマスが出ていたらしい
DSでアイマスが出るらしい
アイマスがアニメになっていたらしい

アニメになっていたらしい

家でもアイマスが出来ることに歓喜した

961プロのプロジェクトフェアリー
我那覇響、四条貴音、星井美希

可愛いなぁ…プロデュース出来ないかな…

星井美希って元々は仲間だったのか…裏切り者やんけ

でも可愛いから許しちゃうの
アハッ☆

アイマスのアニメ…どんなストーリーだろう…

恐ろしいテロを見た

765プロじゃなくて876プロか…
まあ新鮮でいいか
みんな可愛いし

意外にハマった
愛ちゃんアホ可愛い

なんだか765プロのみんなに申し訳なかった

振り返るとアイマスは俺の人生を変えてくれた
生きる気力をくれた
一回り成長した
学校にも行った

きっと俺はいつまでもアイマスと共に歩んで行くのだろう
そう思っていた

いつものゲーセンで出会ったデブはなんだか暗い顔をしていた
俺の顔を見たデブが話しかけてきた

残念だなぁ…

何のことだか分からなかった
デブは俺に携帯を見せてきた

俺の体に電撃が走った

2010年9月1日をもって

稼働を終了致します

デブはきっと泣いていたと思う
俺は実感が湧かなくて黙々とプレイした

家に帰ってカードを眺めてようやく実感した

アイマス…終わってしまうんだな

最後の一ヶ月
俺はアイマスに全てを捧げた
一ヶ月ひたすらにプロデュースし続けた
ユニットは春香のソロのみ

そして最後の日
店には多くのプロデューサーがいた
みんながアイマスをプレイした

この時、みんなちゃんと制限を守っていたのは流石だなと思った
あまり回数を出来ないのは悲しかったが待ち時間も多くの人と思い出話をした

そしてプロデューサーたちは自分たちも最後までやりたいであろうに、全員のユニットが引退出来るように計らってくれた

俺の春香も引退した
Sランクアイドルとして華々しく去った

PSPやDSもヤル気が出ない
なんだかそこにいるアイドルはニセモノのような気さえした

バイトは続け、学校へは行った
しかし何かが足りない

この時、アイマスの最新作を作成中という情報が出回っていた
そして東京ゲームショウというイベントで発表があるということも

俺はこれで何かが取り戻せるかもしれない
そんな期待をしていた

俺はデブと一緒に最新情報を手に入れようと
インターネットに張り付いていた

そこで起こっていたのは残虐な殺戮だった

アイマスに男…

えっ？

男！？

竜宮小町？
ほーん、新たなライバルかな？

えっ？あずささん、いおりん、亜美？
プロデューサーに律子？

竜宮小町？

えっ？

リストラの四文字

あずささんPのデブは死んだ

ロリコンのスーツも死んだ

俺は致命傷を受けつつもデブとスーツを慰め続けた

慰めてほしいのはこっちだよ…

多くのPはすすり泣く
若林直美さん(律子)も泣いていた
恒例のアンコールさえも起こらなかった

アーケードの終了と共にアイマスは…アイマスの魂は死んだのか
運営に、愛など無かったのか
結局親は踊らされていただけなのか

俺は運営を恨んだ

のちにスーツは
「あの日は本当に悪いことをした。もし俺がアンコール!!!と声を出せていれば何かが変わったのかもしれない」と語っている

余談だがスーツとはそこまで仲良く無かったがデブとスーツが仲良く
俺とスーツはアケマス最後の日に語り合い仲良くなった

スーツはやよい真美、そして我那覇響に隠されたロリっぽさに開眼

しかしデブは立ち直ることは出来なかった
あずささんの方向音痴のイベントの度に
「俺が導いてあげる」と呟いていた

デブも少しずつだが回復していった
専ら無印をプレイしていたが

俺も大学生になっていた
ようやくデブやスーツも肩を並べたのだら

「アイドルマスターがアニメ化する」

この言葉には二つの問題がある

多くのPはアイドルマスターの「アニメ化」に大きなトラウマを抱いていた

しかし確かな情報筋によれば今回は正真正銘のアイドルマスターだという

そしてもう一つ
Pにとって乗り越えねばならない壁があった

今回のアニメでこれ以上アイマスを壊されてたまるか！！

アニメで何かが起これば
デブはもう立ち直ることは出来ないだろう

俺もスーツも
もしもの時はデブと共に死のう

そう決意した

俺とスーツら放送日にデブの家に泊まり
共にアニメを視聴した

なんだかんだいっても長年一緒だったアイドルがテレビで動いているのには感動した

何よりアイドル達はあの時と変わらない
トップアイドルを目指している少女たちのままだ

放送が始まって5分もすれば不安なんて消えていた

竜宮小町の結成
そしてテレビでの華々しいデビュー

置いてけぼりのアイドル
スーツは真美のことを想い泣いていた

デブも泣いていた

俺もなんだか悲しくなった

男三人が狭い部屋で泣いていた

迎えた11.12話
竜宮小町の人気ぶりから765プロに亀裂が入り始める

デブも拳を握りしめていた

スーツは美希がフィーチャーされすぎだと怒っていたが

でも可愛いから仕方ないの
アハッ☆

しかしこれだけでは終わらないのがアイマスである
ジュピター、黒井社長の登場である
しかも黒井社長はゲームよりもエゲツないただのクズとして出てくる

余談だが俺もデブもスーツもジュピター自体に大きな嫌悪感はない
むしろデブはジュピター大好きだ
http://i.imgur.com/Gz4V5VB.jpg

PS3やxboxで生活の中に溶け込んだアイマスはなんだか物足りなくなった気もしたけど
俺の人生に寄り添ってくれたコンテンツだ

ライブにいったり特典映像を見る度に声優のアイマス愛も伝わってくる

CDも名曲ばかりだし
何よりPたちもアイマスが大好きだ

ソシャゲとの関わりや
未だ残る運営への不信感

それでも不安はなかった

社会人になったデブ、スーツと共に劇場へ行き
多くのPと共に涙を流した

劇場を後にしても
アイマスの思い出は一夜では語り尽くせなかった
8.19事件もいつしか笑い話になっていた(かといって運営に開き直られるわけにはいかないが)

これからも輝いている春香を見たい
ネタにされたって

失敗したって

やっぱり最後は春香でいてくれる

俺はずっと春香のプロデューサーだと思う

そんな問題もあるように思えるけど
アーケードの頃から蔑まれたアイマスPは
数々の事件を乗り越えたPは
そしてアイマスを、アイドルを愛してやまないPはたくさんいる

アイマスは9年前からオワコンだ
むしろ10年前からオワコンだ

細々でも生き残ってくれ

貴様らが完全悪とは思わん
売り上げなきゃアイマスは存続出来ないし
愛ゆえの行動もあろう

ただアイマスは多くのPの想いの結晶だ
貴様らの一存で好き勝手に動かしていいものではない

俺よりも古くからやっているベテランPは
何をやっても離れないとおもう
ただそれをいいように利用することは絶対に許さん

これからもいいアイマスを作るよう努力してくれ

映画でミリオンに興味をもったぞ
頑張れ

やっぱりアイマスは最高だな
こんなに喜びを共有出来るコンテンツは無い

お前ら大好きだ

だって私たち

～fin～

古参はあんまり使わないよ